Story
誰にでもあるここにしかない家族の物語
街の小さな路地、ふと唄が聴こえる。祭囃子のようなアコースティックな響きは、木造家屋の古本屋の上階から鳴っているようだ。
山尾家長男森男(ミカカ)次男林蔵(Jacky)三男三樹(のっこん)の三兄弟は、音楽という共通点をもつものの、それに対する姿勢はてんでバラバラだ。全員30歳半ばを過ぎ、それぞれの人生を歩んでいるが、時々、森男の部屋に集まっては唄う。特別仲がいいわけでも悪いわけでもないが、三人で唄う理由は、約30年前に亡くした父の法事のため。呑んで唄う独自で唯一の家族行事だ。
ある日、森男の元に、生き別れた異母兄弟の川瀬葉月(前田多美)から手紙が届く。約30年音信不通だった遠い妹が三兄弟の縁に絡み始める。また、三樹の携帯に人生の選択を必要とする知らせが入る。思いがけない便りをきっかけとして、弔いあげとなる父の三十三回忌を目前に、山尾家の日々が動き出す。”犬ころ”たちの唄で紡ぐ兄弟の一歩の物語。