犬ころたちの唄

映画『犬ころたちの唄』
2021年/91分/ステレオ/DCP ©︎Donuts Films

実在とフィクションが交流するような

広島を拠点に活動している”深夜兄弟”という音楽ユニットがいる。メンバーは、ミカカ、Jacky、のっこんの3人で、3人ともボーカルだ。各人ひとりひとりになれば、音楽性は全く別世界になるのに、3人が揃えば絶妙な親和性を生み聴き手を魅了する。
ファッション、キャラクター、年齢もばらばらの3人は、バンドを組むからには一丸となって同じ未来に突き進んでいるかと言えばそうでもなく、ただ、心の根底に同じ風景を大切にしているかのような安心感がある。

そんな深夜兄弟が「もし本当に兄弟だったなら?」と、着想したのは前田多美監督だ。彼女は大阪出身で、東京で俳優として活動していたが、32歳で広島へ移住。監督経験、人間関係もゼロからの状態で映画を作り上げるまでに至った。
何も持たないが故の、不器用さと初期衝動感を纏った映画『犬ころたちの唄』は、その土地に実在する人たち・風景と交流する、紛れもなく”どこにでもあるようなここにしかない”物語なのである。

仕込みの時期を経て出会いたい

2020年7月、プロジェクトは始動した。コロナ禍である。初めての緊急事態宣言を経て、監督・プロデューサーである前田の頭には「今年は仕込みの時期」という想いがあった。今まで通りにいかない、できないことが増える中「作ること」には注力できそう、ということだ。
また、さまざまな表現者たちが収入源や表現の場を失っていた。
予算の限られる自主制作であっても、映画人だけでなくミュージシャンの人たちにも活躍してもらえるような映画がよかった。かつてライブ会場で前田監督が着想した深夜兄弟主演の映画を、今こそ実現させる時だったのだ。

「できること」から可能性を探る

映画を作るにしても、一人でやらない限り感染リスクは伴う。想定外のことが起こっても軌道修正しやすいように、できる限りコンパクトなチームで、月に2〜3日のペースで撮影は進められていった。
「作ること」に注力すると決めたものの、新作映画を届ける営みも止めたくない気持ちもあった。そこで「犬ころたちの唄」プロジェクトは、撮影しながら編集も進め、2020年が終わる頃までに3本の「短編」として配信公開を試みた。映画本来の在り場所は映画館という想いは強いものの、届け方として、当時確実に「できること」だった。

一歩ずつでも出会いの時期へ

2021年。一度配信した短編の『犬ころたちの唄』を解体し、撮り貯めた未公開シーンとともに再構築し、全く新しい劇場版が完成した。
雲が晴れたときに共に笑えるように、たくさんの人たちに楽しんでもらえるように、という祈りを込めた「仕込みの時期」を経て、まだ、コロナの災禍はひどい状況が続いているものの、少しでも生活に楽しみを、文化の営みを繋ぎたい想いで、全国の映画館へ”犬ころたち”は進んで行く。

Story

誰にでもあるここにしかない家族の物語

街の小さな路地、ふと唄が聴こえる。祭囃子のようなアコースティックな響きは、木造家屋の古本屋の上階から鳴っているようだ。
山尾家長男森男(ミカカ)次男林蔵(Jacky)三男三樹(のっこん)の三兄弟は、音楽という共通点をもつものの、それに対する姿勢はてんでバラバラだ。全員30歳半ばを過ぎ、それぞれの人生を歩んでいるが、時々、森男の部屋に集まっては唄う。特別仲がいいわけでも悪いわけでもないが、三人で唄う理由は、約30年前に亡くした父の法事のため。呑んで唄う独自で唯一の家族行事だ。
ある日、森男の元に、生き別れた異母兄弟の川瀬葉月(前田多美)から手紙が届く。約30年音信不通だった遠い妹が三兄弟の縁に絡み始める。また、三樹の携帯に人生の選択を必要とする知らせが入る。思いがけない便りをきっかけとして、弔いあげとなる父の三十三回忌を目前に、山尾家の日々が動き出す。”犬ころ”たちの唄で紡ぐ兄弟の一歩の物語。

News

前売り券情報

映画『犬ころたちの唄』前売り券を販売いたしております。
前売り特典として、大橋裕之さんイラスト、サウンドトラックジャケットステッカー付き!
11月18日までの販売ですので、ぜひお早めに。

定価 1,400円(税込)販売場所:横川シネマ、他

オリジナルサウンドトラック販売決定!

映画の中で登場する深夜兄弟メンバーの曲を中心に、さりげなく使用されたさまざまなアーティストの曲も含めた17曲編成のサウンドトラックCDです。
”聴く”映画としてお楽しみいただける仕上がりとなりました。
イラストは漫画家の大橋裕之さんに手がけていただきぜひお手元にお持ちいただきたい一枚に。

定価 2,000円(税込)販売場所: 横川シネマ、他
販売開始:11月19日

横川シネマにて上映決定!

2021/11/19(金)より横川シネマ(広島)にてロードショウが決定しました。

Cast

ミカカ

1968年5月29日生まれ。パンクバンド「ミカカとアカノタニン」のフロントマン。「深夜兄弟」ではギターも担当。俳優経験は、前田多美監督『カノンの町のマーチ』で新郎役として出演。

キャラクター紹介:山尾森男

長男、52歳。古本屋の二階に間借りし、日々の労働と地道な音楽活動を生業とする。面倒見がいい反面、感情的になりやすい。日本酒が好きだが泥酔しがち。

Jacky

1977年11月2日生まれ。モッズバンド「creeper」「Jacky & THE PATCHES」のフロントマン。「深夜兄弟」ではブルースハープも担当。映画初出演。

キャラクター紹介:山尾林蔵

次男、42歳。優しい妻・仁美と二人の息子に恵まれ、音楽は休日の楽しみとしている。気配り上手で、人と人の間に挟まれがち。ビールが好きで基本的に陽気。

のっこん

1982年11月15日生まれ。バンド「のんべんだらり」「deyney」のフロントマン。映画初出演。

キャラクター紹介:山尾三樹

三男、37歳。皆が認める音楽の才能をもつが、人生の何を決めることもなくその日暮らしをしている。自由気ままな末っ子気質。酒の好みに偏りはなく呑んでは辺りを散歩する。

前田多美

1983年11月19日生まれ。12年 今泉力哉監督『tarpaulin』山下敦弘監督『ありふれたライブテープにFocus』でスクリーンデビュー。13年 オール広島ロケ作品平波亘監督『トムソーヤーとハックルベリーフィンは死んだ』の撮影をきっかけに広島移住を決意。
現在、広島を拠点に俳優・監督として活動中。

キャラクター紹介:川瀬葉月

山尾三兄弟の腹違いの妹、36歳。夫・栗田吉孝と娘の3人家族。兄たちとは絶縁状態だったが、父の三十三回忌を機に、縁を手繰り寄せる。酒は好きだが酔っ払うと何でも言いがち。

青山修三

横川に実在の古本屋「本と自由」の店主。本作に、同場所で本人役として出演。前田多美監督 短編『光をとめる』でも本人役としての出演歴あり。

キャラクター紹介:青山修三

古本屋店主、50歳。山尾三兄弟とは家族のように打ち解けた仲。優しく温厚だが、深夜に酒を呑むと楽しくなりすぎる傾向がある。

梶田真悟

コムたんたん所属。本作脚本担当だが、10代の頃から俳優として演劇界にて活動歴あり。

キャラクター紹介:栗田吉孝

林蔵の職場の後輩。優しい性格だが、思い込みが激しい面もある。

ウエノケンジ(兼平)

のっこんと10代の頃からバンドを組んでおり、現在「deyney」のベース担当。

こだまこずえ(山尾仁美)

ライブペインター。NHK「さわやか三組」担任上条あかね役等、俳優としての活動歴がある。現在は地元広島に戻り、画家を中心に様々な分野で活躍中。

荒谷陽人(山尾夏生)

2013年7月5日生まれ。広島在住。好きな食べ物は、オムライスとアイスクリーム。好きな遊びはswitchのマインクラフトと絵を描くこと。特技は母の手伝い。本作が俳優初挑戦。林蔵役 Jackyの実の息子。

原田丈土(山尾陽大)

撮影当時、中学2年生。広島在住。男三兄弟の末っ子として育つ。バナナが大好物。趣味はギター、自転車で遊びに行く事。本作が俳優初挑戦。

縄手健太(バーの店長)

広島市 白島に実在のビストロ ヴァンダンジュの店主。

カツチヤン(勝田)

広島を中心に活動する弾き語りミュージシャン。サウンドトラック「痺れっぱなしのビブラム」にも参加。

那須直子(ナオさん)

広島市 三川町のレコードカフェ・バー DUMB! RECORDS の女将。

舛部貴子(結衣)

2016年1月29日生まれ。広島在住。好きな遊びはお絵かきとねんど。ゲームとYouTubeも大好き。本作が俳優初挑戦。

Staff

監督・プロデューサー:前田多美

2012年から主に俳優として活動。2013年、オール広島ロケ作品 平波亘監督『トムソーヤーとハックルベリフィンは死んだ』出演をきっかけに、土地の居心地のよさから、広島移住を決意。
広島では活動の幅を俳優から監督に広げ、初長編監督作『カノンの町のマーチ』(2018)をきっかけに『光をとめる』(2020) 工藤祐次郎/リンドウ MV(2020)を制作。本作は長編2作目となる。

脚本:梶田真悟

コムたんたん所属。10代の頃から役者として演劇界にて活動し、20代後半から脚本、演出を手がけるようになる。前田多美監督『光をとめる』(2020)で映画脚本に初挑戦。

構成・編集:村松正浩

映画監督として『シンク』(1997)『兄兄兄妹』(2009)『おちみづ』(2013)など全ての監督作を編集、映画『トニー滝谷』のメイキング・ドキュメンタリー『晴れた家』(2005)なども手掛けている。編集のみの参加作としてドキュメンタリー映画『タイトロープ〜アウトサイダーという生き方〜』(2013)がある。

撮影:西井昌哉

撮影プロダクション brush up代表。地元広島でムービーカメラマンとして30年。前田監督作品への参加は『カノンの町のマーチ』(2018)『光をとめる』(2020) 工藤祐次郎/リンドウ MV(2020) に続き4作目。

録音:松浦智也

映像系専門学校卒業後、広島のプロダクションに入社し約10年間カメラ・音声を学ぶ。現在はフリーランスとして地元テレビ番組を中心に活動中。

整音:バッチグー・山本

秋本音楽事務所所属。広島ミュージシャンの音源制作にエンジニアとして多数携わっている。本作のサウンドトラックCD作成にあたっても、サウンドディレクションを担当。

音楽:久保モリソン

広島を拠点に活動するミュージシャン。弾き語りの他、パンクバンド「ミカカとアカノタニン」のベースを担当。サメ映画マニアの一面も。

助監督:サトシコンドウサトシ

秋本音楽事務所所属。映画鑑賞後、相方の村山タイソンとレビューを配信するポッドキャスト「ふたりの帰り道」を実施するなど、無類の映画好き。ミュージシャン、俳優としても活動歴あり。前田監督『光をとめる』(2020)では制作部、工藤祐次郎/リンドウ MV(2020)は俳優部として参加している。

制作:大野郁代

工藤祐次郎/リンドウ MV(2020)から前田組の制作に参加。
本作では撮影のたびに大量のおにぎりを握るなど、撮影現場での食事まわりを中心に奔走。プロレスと銭湯に造詣が深い。

Message

人生最大の”大わがまま”をさせてもらったと思っています。普段の生活の中で、何気ないやりとりや会話で「あ、今、映画だったらむちゃくちゃ好きなシーンだ」という瞬間があります。そんな網膜上のワンシーンを大切に持ち帰り、脳内で反芻するので、私の撮りたい映画は身近な風景の中で生まれるのかもしれません。ソロだと全く別ジャンルの人たちに見える3人が3人ともボーカルで唄っている深夜兄弟を見たとき、奇跡だと思いました。それと同時に、酒を呑みながら心底楽しそうに彼らが唄う瞬間は、琥珀色の異次元にスライドしたような心地で、勝手に「あ、今映画だ」とにやけていました。
こんな個人的な”脳内好きなシーン集”を映画として実現しようというのだから、出発時点からわがままです。実在から得た私の妄想の断片を、フィクションの脚本に書きおろすのに、常に寄り添って紡いでくれた脚本の梶田真悟さんには、頭が上がりません。彼から提案してもらうアイデアにはいつもワクワクさせてもらいました。
また、一大”大わがまま”をやらかすのだから「全関係者が私の一番好きで、信頼している方々がいい」とわがままはわがままを呼びました。編集は、映画監督として尊敬している村松正浩さんです。映画製作経験の浅い私と梶田さんが紡ぐ無骨な可能性の断片を、作品として構築し、魅力を最大限に表現してくださいました。
本当は全ての関係者自慢を語りたい本作キャスト・スタッフたちは、必ずしも、いわゆる”映画人”ではありません。私のわがままの実現に「自分ごと」として向き合ってくれた”信頼する大好きな人集団”です。このチームで作ったからこそ『犬ころたちの唄』は不器用だけれど力強く、奇跡の映った作品になったと思っています。
たくさんの人たちがきっと知ってる、でも、ここにしかない物語に、ぜひ出会っていただきたいです。

監督 前田多美

Official SNS